中部自然住宅推進ネットワーク       

(CNネット)

第12回勉強会

資料

高気密または床下畜熱式の家屋の防蟻対策について

関係工務店・設計士 各位

 最近高気密・高断熱あるいは床下蓄熱式の新しいタイプの住宅か市場に出回っています快適生活へのニーズの高まりや高付加価値商品の開拓などの必要性から、こうした傾向は今後もいっそう加速されることと思われます。しかしこれをシロアリ対策という点からみるとかなり深刻な事態か予想されています。そして一部ではすてに予想とおりの被害も出始めているのです。

 以下にこらしたタイプの住宅におけるシロアリ対策上の問題点をあげておきますのでよろしくご検討賜りますようお願い申し上げます。

1シロアリを導き入れるような構造

 問題となる構造としては大きく分りて右のような3つのタイプに分けられます。いずれもスタイロフォームのようなシロアリが食害するのが明らかな材料が地面に接するように設計されています。

  とくにAタイプではシロアリが最初に家屋に取りつく場所にスタイロフォームがあり土台までの道筋を提供する形となっています、もし土台に薬剤が処理されていたとしても、そこさえ犠牲をはらって通過すれば容易に壁の中に侵入できます。

 Bタイプでも有基礎をまわり込んだシロアリは土台まで―直線です。

 A・Bでは多くの場合壁の中にもスタイロフォームか詰まっているので、被害は壁の中に広がるのは容易に想像できます。

Cタイプではかなり土間コンに厚みがありますが、直接土間コンを暖めるため冬場のシロアリの活動環境を提供し、コンクリートの貫通行動を促します。場合によっては温水パイプを加害され、水漏れが起き、その水によってシロアリはさらに勢いを得てしまいます。

2「乾いている木は加害されない」というのは誤った神話

 木が乾いているからシロアリが来ない」というのをよく住宅メーカーの資料で見かけますが、これはシロ の生態をまったく知らないいいかたです。これは現場の知識の少ない学者のなかにも少なからずあります。

 ヤマトシロアリ属のシロアリはたしかにイエシロアリ属に比べて水を運ぶ能力が劣ります。しかし数十pあるいは1m程度までは通常水を運びます。

 また実験室で乾燥材と湿潤材をならべて実験するとシロアリは湿潤材の方に当然向かいます。しかし自然界では地中のシロアリは木に取りついたときに湿っているかどうかを判断するのてあって、あらかじめ乾いている木を認識して食害するのをやめるということはまったくありません。そしてその木が乾いていれば地中から水を運べばいいのです。たからヤマトシロアリ属でも梁や書籍などの被害か起こるのです。

 したがって家を乾燥させるということはシロアリ対策上の―部ではあっても、それてシロアリを阻止することはできないのです。

3意外な盲点となる温度

 シロアリの家屋への侵入の原因として意外に見落とされているのが温度です。そもそもシロアリは熱帯性の昆虫であって、温度にはかなり敏感です。とくに低温に適応したヤマトシロアリ属ではわずかな高温域を利用する性質があり実際暖房設備の向上によって生息域を北上させでいるのてす。―般の家屋ではシロアリの被害が多い場所は北側のジメジメした場所ではなく南向きの玄開まわりなとです。

 高断熱・高気密住宅の多くは床下に温風を通したりして床下温度を上げるので、シロアリを呼び寄せる結果になります。なぜ昔の住宅がシロアリが生息しているにもかかわらず被害か少ないかといえば温度が低いことが一番の厚因なのてす。床下をむしろ冷やすこと、これこそがシロアリの棲息する日本では必要なのではないでしょうか。

4メンテナンス上の問題点

 万が一シロアリ被害にあった場合、一般の住宅では被害部の部材を取り替えが容易です。またシロアリを駆除する場合でも、巣の位置や侵入経路の特定も容易で確実な対処ができます。しかし高断熱・高気密住宅では一定の部分(壁全体・床全体など)をすべて徹去しなけれはならなくなります。

 Bタイプでは床下にもぐれさえすれば最悪の場合でもスタイロフフォームのすべてを撤去すれは駆除は可能であるだけでなく、家の外観を損ねることもありません。ところがAタイプでは布基礎外面のモルタルを破壊してスタイロフォームを撤去するので家の外観はかなり異なってきます。

 また壁がスクイロフォームの詰まったパネル構造の場合、A・B・Cのどれでも修復にはかなりの困難と費用が予想されます。もちろんこうした構造では、壁を撤去または破壊せずに駆除することは不可能です。

 Cタイプでは駆除すら不可能に近い構造です。床板をすべて撤去したとしても、温水パイプかあるために土間コンに薬剤の穿孔注入すらできず、まさに家を建て直すしかなくなってしまいます。

5工場での木部薬剤処理は有効か

 薬剤の注入された木材は薬剤の有効性のある間はシロアリは当然加害しません。しかし、通過はできます。 とくに殺虫剤としての防蟻剤は―般に木部処理には浸透性のよい油剤が使用されます。したがって木部表面に多量の藁剤か存在するわけではないので、シロアリはある程度の個体の犠牲を払っても蟻道を処理面に設置しいったん設置されれは後から来る個体は薬剤に影響されることなく通過するのです。これはクレオソート処理土台が通過されて畳が加害されるのと同じことです。一般的な防蟻処理はただ単に薬剤を吹き付けるのてはなく、それぞれの技術者かその家屋に合うように土壌処理・コンクリート表面処理・土間まわりの処理などをみずからの経験した被害事例に基づいて組みあわせ、また薬剤も選定するのです。工場で処理すれぱ加害されないと考えるのは、防蟻処理を単なる薬剤処理だと考えることによるもので、工場注入が得意な某住宅メーカーの家屋にもシロアリ被害があるのはそうした単純発想によるものです。

 またかつてある建材メーカーが「○○工法」というシロアリ防除システムを始めて失敗したのも事実です。すなわち「薬さえ処理ずれはシロアリに加害されない」という単純発想なのですが、これと同じような単純発想で「乾いていればシロアリが来ない」「コンクリートが厚ければシロアリが来ない」「工場て木材の芯まで処理すれば大丈夫」といった結論がいまだに横行しているのです。

 シロアリも含む多くの「害虫」と呼ほれる昆虫は、もともとがギリギリの環魂で生きるようになっているのであり、人間が考えもつかないような行動をしばしばとります。そして人間は長い間こうした昆虫を拒否するのでなく、うまくつき合ってきたのです。したがって人間が自分たちの住みよい家屋を作る場合、こうした昆虫の生態に合わせた形にしないと、後でとんてもないしっぺ返しに合うのです。まだまだシロアリには解明されてない部分が多く、単純発想は禁物です。

 工務店 設計士各位におかれましては家屋が自然界にかかわるものであるという点を十分検討され、人間のみの快適さ優先ではなく、自然との調和の視点で高気密・高断熱について再検討されますようお願い申し上げます。

環境動物昆虫学会会員

神谷 忠弘

 

 

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